岩手県の介護ニュース お年寄り安否情報発信 県立大などシステム普及へ 2010年 02月 24日 (水) わが国の高齢者介護は、1963年に老人福祉法が制定された以降、70年代の老人医療費の無料 化、80年代の老人保健法の制定、90年代の福祉8法の改正・ゴールドプランの制定など、人口 の急速な高齢化が進む中で、時代の要請に応えながら発展してきた。 2000年4月から実施された介護保険制度は、措置から契約への移行、選択と権利の保障、保健 ・医療・福祉サービスの一体的提供など、わが国の高齢者介護の歴史においても時代を画す改革で あり、介護保険制度の導入によって高齢者介護のあり方は大きく変容しつつある。 わが国の平均寿命は世界でも最高水準となった。高齢期は今や誰もが迎えると言ってよい時代とな っており、また、高齢者となってからの人生も長い。その長い高齢期をどのように過ごすのかは、 個人にとっても社会にとっても極めて大きな課題となっている。 人生の最期まで、個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことは誰もが望むものである。 このことは、介護が必要となった場合でも同じである。 そうした思いに応えるためには、自分の人生を自分で決め、また、周囲からも個人として尊重され る社会、すなわち、尊厳を保持して生活を送ることができる社会を構築していくことが必要である。 また、高齢者介護においても、日常生活における身体的な自立の支援だけではなく、精神的な自立 を維持し、高齢者自身が尊厳を保つことができるようなサービスが提供される必要がある。 介護保険は、高齢者が介護を必要とすることとなっても、自分の持てる力を活用して自立して生活 することを支援する「自立支援」を目指すものであるが、その根底にあるのは「尊厳の保持」であ る。 今、私たちの直面する高齢者介護の課題をとりあげたい。 『 県立大(中村慶久学長)と県社会福祉協議会(菅三郎会長)などは、情報通信技術(ICT) を活用した高齢者の安否確認システムの構築と普及を進めている。お年寄りが自ら健康情報を発信 し、それを基に地域全体で見守る仕組み。孤独死の増加が深刻化する中、地域や社会の状況に合わ せた多様な体制を整備し、お年寄りを見守り、支える環境づくりを目指す。 「いわて“おげんき”みまもりシステム」と名付けた安否確認システムは、全国初の取り組み。 2008年度に実験システムを構築し、09年度は県が国の「ユビキタスタウン構想推進事業」 (地域情報通信技術利活用推進交付金)の助成約2千万円を受けて進めている。 同システムは、お年寄りが普段使っている電話機から1日1回電話し、自動音声に従って「1げん き」「2すこしげんき」「3ぐあいがわるい」「4はなしたい」のいずれかを選択、発信する。 民生委員や隣人、牛乳や宅配便を配達する民間事業者らの見守り協力者が気掛かりなことがあった 場合は、携帯電話やファクスから情報を発信することができる。 各市町村社協が見守りセンターとなり、インターネットを活用して24時間に1回以上、お年寄り、 協力者双方の発信状況を確認する。安否が確認されない場合は電話で確認。状況に応じ、地域の見 守り協力者に直接の確認を依頼する。 同大社会福祉学部の小川晃子教授は同システムの特徴を「他人に迷惑をかけたくないという高齢者 の遠慮感を考慮し、見守る側の『過度の見張り』を避けることができる。気付きを集約でき、確実 で定期的な見守りになる」と説明する。 現在、川井村や盛岡市、久慈市などで約50人が利用する。今後、600人規模まで対応できるよ うシステムを増強。利用者の安否情報を見守り協力者や別居家族などへ転送する仕組みも構築もす る。 昨年8月には県立大、県社協、青森県社協の3者がシステム共同研究の連携協定を締結した。県の 枠を超えて実用化に向けた社会実験を展開し、地域社会の福祉向上を目指す。県社協地域福祉企画 課の根田秋雄課長は「この試みによってより具体的な生活課題が見えてくる。新たな社会福祉事業 として取り組んでいきたい」と話す。 岩手日報 』